メルモフレールのディスクオルゴール

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前回まで3話に分けてメルモフレールの紹介をしてきましたが、主にシリンダーメーカーとしてのものでした。 予告通りメルモフレールのディスクメーカーとしての実績を紹介したいと思います。創立の歴史等は前回までの話と重複する部分もありますが、Encyclopedia of Automatic Musical Instruments に忠実に翻訳してありますので、省略せずに記述します。 Miraの表記に関して、日本では「ミラとマイラ」のように「英国式と米国式」の読みの違いがあるようですが、榎屋では米国から輸入する事が多い為か、マイラで通っていますので、以下文中ではマイラと表記します。

では、どうぞ

 メルモ・フレール社は、1816年に創立され、長きにわたりスイスの最高級シリンダーオルゴール・メーカーの名を君臨させた。その会社がディスクオルゴール市場に参入してきたのは、1890年代の事である。メルモの主力商品は、ばねの力を利用したスター・ホイールにより裏面に突起の無いディスクの使用が可能になった(アンドレ・ジュノの特許)ステラ。そしてディスクに突起物のある、マイラであった。

 これらは、メルモ社が時計産業やソープ・ディスペンサー等に変換しはじめた1909年まで生産されていたと思われる(以前から時計産業は行っていた)。蓄音機等も扱っていたようで、オルゴールと組み合わせたマイラ・フォンも制作していた (Miraphonとして販売されていたが、英語圏ではMiraphoneとなっていた。)

 ステラと、マイラの機械のほとんどは、ケースなしで販売されていた。イギリス、アメリカ、フランス等のディストリビューターが機械のみを仕入れた後、各国々にあったケースに組み込み販売していた。これらの理由からステラやマイラのケースは、世界標準デザインが、存在しない事がわかる。

 1896年にG.ボートマンとアルフレッド・ケラーの二人がディスクのシフティング機構を発明した。これにより1周目は1曲目の突起に当たり、2周目は、ディスクがシフトする事により2曲目の突起に当たる。同一ディスクで2曲聞ける機能を持ったディスク・オルゴールが発明された。これらは、ニューセンチュリーやシリオンと呼ばれた。メルモ・フレールは主に機械のみの販売を行っていたので。ケースは、他の会社に任せている場合が多い。1903年にメルモ・フレール社は、ディスク・シフティング・システムで特許をとっている、しかも1枚のディスクで3から6曲演奏出来るものまでもあったという。しかしそれらのディスク・オルゴールが実際に存在したかどうかは、定かではない。

 アメリカに於いて、メルモ・フレールは、ニューヨークにあるジャコット・ミュージック・ボックス・カンパニーという会社が販売していた。この会社は、(サン・クロアにあるPailladとも親しかった)メルモ社のディスク・ボックスのカタログ制作にも力を入れていた。ジャコット社が販売していたステラの中には、電動式のモーターを使用したものもあった。

 ステラとマイラは、当時大量に生産されたにもかかわらず、ビッグ3と呼ばれるポリフォン、レジナ、シンフォニオンと比べると残存数が割りに少ない。メルモのオルゴールは、全般的なクオリティが高く、現在でも最高級機の一つと考えられている

 ニューセンチュリー・オルゴールは、ディスク・シフティング機能も加え、何種類か製作された。アメリカ製とヨーロッパ製のケースが一般的だが、今日では希少価値が高い。シリオン(作者はディスク・シフティング・タイプしかみたことがない)はドイツのケースで、とても希少なものだ。

 注:ステラのディスクは、当初亜鉛だったが、後期のものはスチール製。マイラのディスクは英語版と三カ国語(英語、フランス語、ドイツ語)がある。

Encyclopedia of Automatc Musical Instruments p.118

如何でしたでしょうか。 記事内にもあるようにメルモフレールのディスクオルゴールはどれも完成度が高く、現在でもすばらしい音色を聞かせてくれます。