メルモフレール 第3話

さて、今回で「Encyclopedia…」からのメルモフレールのシリンダーについての歴史についての最終話となります。
今回も1895年のメルモフレール社のカタログからの抜粋が主な内容ですが、更に仕様についての詳しい説明と、数々の独創的な機能についての説明があります。
機能についての説明の部分には解りやすいように、写真を追加しています。

チューンシート上のメルモフレールのロゴ
1816年と記入されていますね。


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オルゴールの曲は櫛歯の調律とシリンダーに植え付けられたピンの配列によって決まります。サブライム・ハーモニーやソプラノ等の櫛歯が2つに分かれたタイプの物は最高の結果をもたらします。また櫛歯のスタイルの違いにより、違った効果が得られます。
「PEERLESS FORTE-PICCOLO」すばらしいピッコロの効果をフルトーンで再現します。
IDEAL EXCELSIOR」通常の普及版のオルゴールに比べてぎすぎすしたところが無く、力強く深い表現力を持っています。
「IDEAL GUITARE」比較的柔らかな音を再現します。チターアタッチメントとの相乗効果でギターやマンドリンの様な音色を再現します。同じ音の早い繰り返しを持ちトレモロ効果を生み出します。甘い音楽を奏でるのに最適な櫛歯の仕様です。
「IDEAL PICCOLO」GUITAREと同様の効果を持ちますが、1オクターブ高い音階を持たせることで更に軽快なトレモロを表現します。ピッコロのきらびやかな演奏を再現しているかのようです。
「IDEAL SUBLIME HARMONIE」2つの櫛歯で構成され、低音部と高音部に分かれています。この構成によりより深く落ち着いた音色が楽しめます。強弱の表現も効果的に再現されます。
「IDEAL SOPRANO」サブライムハーモニーの全ての要素を備え、ソプラノ、アルト、テナー、バスの4パートで構成されています。
「IDEAL SUBLIME HARMONIE PICCOLO」サブライムハーモニーの深い音色を持ち、美しいピッコロの効果も加えられています。高音と低音を際立たせる事で、メロディーが「IDEAL SOPRANO」よりもはっきりと表現されています。
「改良点」
「ダブルゼンマイ -Coupled Mainsprings-、この改良により従来の演奏時間が2倍になり、「Ideal」シリーズではゼンマイをフルに巻いた状態で機種により18分から長い物で60分間の連続演奏が可能になりました。」
「曲表示器 -Tune Indicator-シリンダーの動きを感知して現在演奏中の曲が何曲目であるかを表示します。」

Tune IndicatorとTune Skipper
「選曲ダイアル -Tune Skipper- この機能により目的の曲を選択して演奏する事が可能になりました。曲表示器の中心にあるノブを回し、聞きたい曲の番号にあわせる事で、間にある曲を飛ばして目的の曲から演奏を始めます。」

Tune IndicatorとTune Skipper
あまり見れない横からのアングルです。
「ハープチター -Harp Zither- チター又はハープアタッチメントは創意工夫に富んだ発明機能です。金属製のフレーム又はホルダーに紙のロールが取り付けられ、その紙が櫛歯に触れる事で弦楽器の様な音色を奏でます。レバー操作によりチター効果の有無を選択できます。さらにどのようなシリンダーオルゴールにも取り付け可能です。」

Harp Zither
「速度調整器 -Moderator- この機構はガバナーの羽に取り付けられ、オルゴールの演奏速度を自由に早くしたり、遅くする事ができます。「Ideal」シリーズの速度調整器はゼンマイの残力に関わらず常に一定の速度で演奏する事を可能にします。」

Moderator
「安全装置 -Safety Check- この機能は計り知れないほど貴重な改良点です。急激な衝撃からメカニズムを守ってくれます。*5エレベータの非常ブレーキの様な役割です。」

メルモフレールのパラシュートの刻印ですね。

こちらは、Jacotのセーフティチェックの刻印です。
メルモ・フレールのオルゴールの中でも特筆すべきオルゴールが2点存在する。20インチのシリンダーに専用台が付属するNo.443「Ideal Quatour Soprano」と24 1/2インチシリンダーのNo. 520 1/4「Ideal Sublime Harmonie Piccolo」である。なんと、このオルゴール用の交換用シリンダーは当時、1本あたり175ドルもした。
1 1/2インチから3インチのシリンダー長の小型シリンダーは楽器というよりも玩具やノベルティに近い物で、同様のオルゴールはトーレンスや他のスイスのメーカーも製作していた。その中には現在でも生産を続けているメーカーもある。メルモフレールはコイン始動式のオルゴールも限定数であるが製造していた。それらは今日では希少価値が高い。1894年にJacot & Son (メルモフレールの米国における代理店)のCharles H. Jacotがシリンダーオルゴールにおけるコイン始動の機構の特許を取得している。特許の資料(米国特許番号518,720)*6によるとコンソールタイプのケースにフロントガラスが斜めに配置されているイラストが表記されている。
1880年代後半以降のメルモフレールの特徴的な機能として、1886年にJacot氏が特許を持つパラシュート・セーフティ・チェックが搭載されている。この機構は大きな盾の形をしたプレートでオルゴールの演奏中に上下動を繰り返す。
1890年代後半から1900年代前半にはメルモフレールはStella(ステラ)、Mira(ミラ、マイラ)、Empress(エンプレス)に代表される傑出したディスクオルゴールの生産を開始する。Miraphone(ミラフォン、マイラフォン)というオルゴールも作られ、これはレジナフォンと同じようにオルゴールとSP盤を演奏する蓄音機の機能を併せ持つ機械である。
メルモフレールは第1次世界大戦の始まった頃に操業を停止したと言われている。1913年頃の広告には石けんのディスペンサーから蓄音機まで扱うカタログがあった事が確認されている。
更なるメルモフレールに関する情報を、本書のMiraやStella(118ページから)*7の項に記述しているので、参照いただければ幸いである。
Encyclopedia of Automatic Musical Instruments
pp.52-58
*5ここで言う急激な衝撃とは外的な物ではなく、メカニズム内における衝撃で、例えばゼンマイが切れたり、ガバナーやその他のギヤが破損する事で、シリンダーが急激に回転しコームの破損を防ぐ機能です。
*6現在でも米国特許庁のホームページから特許資料を閲覧する事が出来ます。興味のある方はこちらにリンクをはっておきます。
米国特許庁の資料
*7ここで言う本書とはEncyclopedia of Automatic Musical Instrumentの事で118ページにメルモフレールの製作したディスクオルゴールについての記述がある。
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如何でしたでしょうか。オルゴールと一言で言ってもいろいろなオルゴールが存在しますね。音質や便利さを追求して様々な苦労をしていた事がわかります。ゼンマイは今でもシートベルトの巻き戻し機能や、電源ケーブルの巻き戻し機能等いろいろな所に使われています。有名な話では米国のレジナ社が後に掃除機のメーカーになったり、他のメーカーではタイプライターを製造していたメーカーもあります。機械の改良を進めていくうちに、技術の流用が可能なものもたくさんあった事と想像できます。今回紹介した技術も、もしかすると身近なものに使われているかもしれませんね。
米国での特許情報がこんなに古いものでもホームページで確認できるのも少し驚きますね。ぜひチェックしてみてください。
次回は記事の最後にもありましたが、メルモフレールのディスクオルゴールについて書いてみたいと思っています。
最後にメルモフレールのオルゴールで見かける特許番号の刻印プレートの写真です。苦労して特許を取ったのですから、自慢したくなるのもうなずけますね。

メルモフレールのディスクオルゴール

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